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21st BIFFから/ニューカレンツ部門の「A Billion Colour Story」 [インド]

受賞はならなかったが、ニューカレンツ部門にノミネートされたインド映画「A Billion Colour Story」(2016)は新人のPadmakumar Narasimhamurthy監督が脚本・撮影も務めたフレッシュな印象の作品だった。
その題名に反して、映像が一貫してモノクロであることについて違和感を覚えたが、ラスト近くの、ある出来事を境にしてスクリーンに色がつく瞬間に、それが本作のテーマにも繋がる大いなる仕掛けであることに気づかされる。(さてここから先は物語の結末に触れてしまいます。)
若いころに留学先の豪のフィルム・スクールで出会った、ムスリムの父親とヒンドゥーの母親の間に生まれた、10歳くらいの少年Hariを中心とした物語。リベラルな考え方を持った両親は、混沌とした猥雑さも含め母国インドをとても愛していて、ボンベイで新作映画を企画している。しかし資金が集まらず自宅を手放さなくてはならなくなり引っ越し先を探すのだが、ここから一家はムスリムに対しての不当な扱いに直面していく。一家のライフスタイルは宗教的偏見からは自由であるため、周囲と激しいハレーションを起こす。
小さな部屋で三人暮らしとなってしまっても、リズムのいい編集のなかでHariはいきいきとしている。誰もが愛したくなるこの少年から、両親の育て方の良ささえうかがえる。ムスリムの少女との恋物語も微笑ましい。そんなHariの命が一瞬のうちに奪われてしまう。彼の父親を狙った銃弾が逸れてしまったのだ!
少年Hariのいなくなった世界…、両親やHariを囲んできた人々が嘆き悲しむこの瞬間からこの作品には色がつく。Hariは両親の映画づくりを支えるために寄付を呼び掛ける映像をネット上にアップしていて、深い喪失感と時をあわせるようにして、Hariが集めた大金が届いたのだ。それらはヒンドゥーでありムスリムでもあるHariからの愛であり、また宗教対立のない平和なインドを求める多くの人々の想いでもあった。そしてそれらには、それまでHariの一家を苦しめてきたインド社会、そのほんの一部分にすぎないけれども、鮮やかに染め上げる力があったのだ。
(2016年12月19日)

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