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香港のドキュメンタリー「乱世備忘」 [香港]

日本・香港インディペンデント映画祭2017でとても評判だったらしいドキュメンタリー作「乱世備忘〜僕らの雨傘運動」(2016)の九州初上映を、第 31回福岡アジア映画祭で観た。香港が中国に返還されて今年で20周年を迎えるため、その記念日である7月1日前後には新聞や報道番組でもその20年間が振り返られている。当初は一国二制度が約束されながらも大陸の締めつけが厳しくなってきており、その中で起きた書店主行方不明事件も衝撃的だったが、2014年に起こった雨傘革命は、とくに後世からみても歴史的に重要な出来事となるものだ。
日本のテレビでは、恋ダンスまで踊る、革命のマドンナ的な逸材アグネス・チョウさんが特に取材対象になっていたので、香港の新人チャン・ジーウン監督の眼で、雨傘運動に関わる一般の若者たちに焦点をあてた本作こそ、われわれとの距離感が縮まる、すなわち立場置き換え可能な視点を与えてくれる。
20くらいの短いチャプター構成の中からは、力強い政治的主張や、死にものぐるいの闘い模様が、じつはそれ程には見あたらない。雨傘運動を支持して参加する若者たちの様子は、何だか部活動のようだ。陣を張りながらナンパもする。彼らの口からは、彼らと直接対峙している警官たちに関して、「警察も仕事だから…」といった感じの、とても冷静な割り切った発言が何度も出てくる。
そして雨傘運動の終焉、つまり本作の終わりからは、トーナメントに敗退して部活動の最後のシーズンが幕を降ろす、卒業のような、若さならではの感動が伝わってくる。
彼ら、彼女らの人生は、これから先どちらへと進んでいくのだろうか。学生運動家が卒業後は社会の一員になる、そういう道筋からみると、彼らの中から、例えば、向き合っていた警察側に進路をとる者も出てくるのかもしれない。観ていてそう感じさせることじたいが、彼らの青春の終わり、そのものなのだと思う。
(2017年9月4日)

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アジアフォーカス2013/400字レポート ⑧ 「狂舞派」 [香港]

アジアフォーカス2013/400字レポート ⑧
「狂舞派」(2013) 香港 アダム・ウォン監督

ヒップホップ・ダンスを題材にしているということだけならば、それほど大きく期待はしないところだが、そのあらすじをチラシで前もって読んだことで、太極拳を取り込んだ、香港カルチャーならではのすごくユニークな融合物が観られるものとばかり勝手に期待して、そして勝手に失望してしまって、申し訳ない。ふたつのグループのダンス対決がドラマの柱だが、相手チーム・ルーフトッパーズのレベルはさすがに高かった。けれども、それに対抗するヒロインたちチームの最後のそれは、なんだかとても、超変化球。
ヒロイン役の女優にはハツラツとした魅力もみられたが、青春学園ドラマとしてはどうも陳腐で、人物たちは皆ギャグマンガのように上っ面だけで描かれ、そこからは何の葛藤も感じられない。「阿里山の娘」がトラウマになっているエゴなセクシー女なんて、特に。クライマックスのダンス大会前に怪我をしてしまったヒロインの心の揺れも、起承転結を形作るために、とって付けたよう。マンガならマンガとして、「狂舞派」という題名の字面のように、もっとハチャメチャに振り切った展開が欲しかったなあ。ヒロインには潜在力があると思われるのに。
(2013年12月29日)


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爆音で観た「燃えよドラゴン」 [香港]

12月24日、ついに九州初上陸の「爆音映画祭2012 in FUKUOKA」の会場、西鉄ホールに行ってみた! じつはとても楽しみだった。本当は初日の「アンストッパブル」を観たかったのだけれど、用事が重なってしまい、この日に観たのは「燃えよドラゴン」(1973)! だけど、ドラゴンは良かったし、いやあ、とにかくこの「爆音」というものは、すごく良かった。
観慣れたものと勝手に思い込んでいたブルース・リーの世界。それが、これまで自分の中で理解消化してきたものとは全然違う! 振り返って、ブルース・リーの御姿をスクリーンで拝んだことも、それほど経験はなかったことに気づく。
だからスクリーン上映であるだけでも貴重な体験で、相当な迫力を感じるのだが、「爆音」効果で、格闘場面はさらにとんでもなくすごい臨場感なのだ。当初は単純に大音量の上映なのかと思っていたが、どうやらそうではない。ボリュームの問題だけではなく、丁寧に音が作られている。プロレスの大会場のマッチで、投げや受け身によってリングを叩き鳴らす音をマイクで拾い集めて、会場全体に響かせるライブの演出がある。それを初めて体感した時にはちょっとした感動があったが、それとも比較にもならない凄さ。ブルース・リー作品を、新日本プロレスのG1や東京ドーム大会のような3D映画にしたらどうなるのだろうと、これまた妄想までふくらむ。
もう、あのおなじみのドラゴンのテーマ曲が、ガンガンと響いてくると、全身に鳥肌が立った。心臓の内側までうぶ毛がそそり立ったのではなかろうか。
プロレス絡みの話で続けるが、オープニングの格闘シーンの、リーのフィニッシュ技が腕ひしぎだったことに、恥ずかしながら今回初めて気付いた。スクリーンで観たからだが、リーにキメられてしまう相手役をしていた若きサモ・ハン・キンポーがその30年後の出演作「SPL/狼よ静かに死ね」でみせた、総合格闘技系のサブミッション技の華麗さをあらためて思い出した次第。
さて前座と言うと失礼だが、上映前にアクション女優シンシア・ラスターこと大島由加里さんのパフォーマンスとトークが合計で10分あった。わたくしと同年齢の彼女に向かって、MCが「大島さんはブルース・リーに会ったことはあるのか」と無茶苦茶な質問を発していたが(シンシア・ラスターに芦田 愛菜のような子役時代があったとでもいうのか!)、「燃えよドラゴン」のスタッフや出演者とは一緒に仕事をしたことがある、と軽くかわしておられた。リーの敵役を演じた名優・石堅とは、彼女のデビュー作「上海エクスプレス」(1986)で共演されたそうだ。とても気の毒だったのが、お弟子さんらしきグループとともに、彼女が考案したウー・スー・ウーという武術的なダンス(?)のショーを披露された際、舞台照明は地明かりで、客電も点いたままだったこと。大女優に対して工夫もなく、あまりにも曝けていた。
(2012年12月27日)


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アジアフォーカス2010/400字レポート⑦「セックスワーカー」 [香港]

アジアフォーカス2010/400字レポート⑦
「セックスワーカー」(07)香港 ハーマン・ヤウ監督

意欲的な者、捨て鉢な者いろいろだが、体を張って歓楽街で働いている女性たちの前では、性労働者の人権やその支援を声高に叫びながらここに登場してくるエルシーという女子大生の主張があまりにも頭でっかちなもので、きれいごとに聞こえてしまう。「売春は世界最古の商売である」「ニーズによって存在する正当な商売である」などというような視点から一方的に論じるのだが、セックスワーカーたちに総論としては理解されても、女性たちひとりひとりの立場はばらばらであるから、論点は共通しない。だが、このエルシーは脇役なのでこの程度でよくて、作品の主役としては、明確なプロ意識を持って本土から出稼ぎに来ているハッピーのような女性がいて、交際している男子学生に対して本当のことが言えないナナのような女性がいる。
香港のとあるナイトクラブに働く女性たちの、閉店までの10日間の裏側の実像を、ありのまま風の猥雑な生活描写に徹した。歓楽の世界にあって、タッチも色あいも完全に娯楽作だが、テーマの置き方がちょっと異色だった。
(2010年10月3日)

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許鞍華監督のスペシャル対談「映画と文学の世界」について [香港]

香港のアン・ホイ(許鞍華)監督の第19回福岡アジア文化賞大賞受賞の関連行事であるフォーラムが、9月13日にアクロス福岡イベントホールで催された。対談形式をとっており、吊り看板に掲げられているタイトルも、ずばり、スペシャル対談「映画と文学の世界」。対談というからには、登壇者2名は対等の関係にあるわけで、アン・ホイ監督の相手役は、福岡在住の芥川賞作家・高樹のぶ子さん。だから対談のテーマに、これまた、映画と文学が平行に並んでいるわけである。司会者は別に居るが、高樹さんの問いかけにアン・ホイ監督が返すというパターンで前半は進行していった。
英語の同時通訳を介してのやりとりは、正直に言って、噛み合っていない。抽象的な事象を追いかけようとしているためだろう。しかし高樹さんは、自分は感性でしゃべりますからみたいなことを冒頭でおっしゃっていて、それが原因のひとつだとは思うが、最初にことわっておられるので、高樹さんに非はない。もともとアーティストを相手にしたこの手のもの(特に初対面者が聞き役になる)で、うまく成立した例をあまり見たことがないし。通訳者の不勉強(事前の打ち合わせ不足)も今回あったのでは?
日本のある映画監督の方から聞いた話がある。上映後のティーチ・インで、聞き手がやたらに自分なりの作品分析に固執してまくし立てて(まるで自分がその映画を撮った監督でもあるかのように)、監督の方に無理に同意を求めてきて辟易するということを。そういう時は、軽く返してとぼけるのだという。アーティストは、言葉で語らない代わりに作品で表現しているのだから、雄弁にしゃべることをなかなかしない方も多いと思う。
フォーラムの後半は司会が入り込むことで、何とか整えられてきた。まあ今回の収穫は、アン・ホイ監督の語った言葉というより、高樹さんなりのアン・ホイ観、映像芸術に対する考えが聞けたことだろうか。ひとつポイントとなるところは、テーマどおり、映画化する側とされる側という二人の立場である。高樹さんは「忠実に映画化されるのはつまらない。素材として扱ってもらって、解釈をみせてほしい、別の才能で作り直してほしい。原作者として驚きや発見を得たい」そうだ。これまでに自作のうち「波光きらめく果て」「霧の子午線」「透光の樹」が映画化されている。
一方でこれまでに小説の映画化を5本手がけているというアン・ホイ監督は、張愛玲の作品の映画化について、批評家から原作に忠実すぎると批判を受けたが、もう1本のときには原作の精神にうまく肉付けができて成功したと自分では思う(「傾城の恋」と「半生縁」のこと?)。金庸の小説の場合も、一部分に焦点をあてたことでファンの期待を裏切ることになったが、小説が有名なので客の入りは良かった(笑)(「書劍恩仇錄」のこと?)。
対談はほんの1時間で終了。そのあと、第19回東京国際映画祭で公開された、アン・ホイ監督の近年の傑作「おばさんのポストモダン生活」(06)が福岡で初上映された。しかし映写環境の悪さが目立った。
(2008年9月20日)

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おめでとうございます。許鞍華監督が第19回福岡アジア文化賞・大賞を受賞 [香港]

アン・ホイ.JPG
香港・尖沙咀のウォーターフロントにある「アベニュー・オブ・スターズ(星光大道)」。ここには香港の有名映画人の手形とサインの入ったプレートがプロムナードにそって埋め込まれている。もちろん、許鞍華監督のものも!

先月いよいよアン・ホイ(許鞍華)監督への贈賞がおおやけとなったので、ここでも書こうと思う。文末に主なフィルモグラフィーをまとめてみたが、アン・ホイ監督の作品は、そのほとんどが日本で紹介されていることがわかる。カンフーやノワールものではなく、むしろ社会性をあわせ持った、ジャンルとして振幅の広い彼女の作品群は、映画祭向けとはいえるものの、ここまできちんと日本で取り上げられているとはちょっと意外でもある。無視できない高レベルの作品を製作し続けているという証である。
香港ニューウエーブの旗手として登場したアン・ホイ監督も齢60歳を過ぎ、功労賞的意味を持つアジア文化賞の贈賞対象となったことは、当然至極ということか。この賞はアジアとはいっても、南アジアまでを対象とするので、例えばキアロスタミやマフマルバフ、アモス・ギタイなどは該当しない。これまでの過去の受賞者に張芸謀、侯孝賢、林権澤らがいるが、筆者が予想する今後の候補者(監督に限って考えると)は、巨匠クラスでいえば陳凱歌、ダン・ニャット・ミン、ゴーパーラクリシュナン、レスター・ジェームス・ピーリスらの各氏、それに続いて蔡明亮、王家衛、ヌグロホ、マニラトナムといったところか。俳優に広げるとハキム、アン・ソンギ、ジャッキー・チェンあたりだろう。
筆者の年齢からいうと、映画作家の活動の軌跡を、順を追って同時代的に体感してきたのは80年代半ばあたり以降から。なので大物、巨匠級の監督の作品は、中盤以降の作品や代表作あたりからまず観始めて、初期の作品へとさかのぼって観てきた経験がある。
アン・ホイ監督についても、もちろんそうである。監督デビュー作は「瘋劫(シークレット)」(79)。香港ニューウエーブは、テレビ界で才能を発揮してきた当時の若手たちが、映画界に移ってきて起こした新たな波を指す。76年のレオン・ポーチ(梁普智)監督の「跳灰」(ジョセフィン・シャオ(蕭芳芳)と共同監督)からスタートしたといわれるが、アン・ホイ監督はツイ・ハーク(徐克)監督と並んでデビューした79年組。そしてその映画第一作「瘋劫」は、もちろん後からさかのぼって観たのだが、度肝を抜かれる心理スリラーである。実験的なショットで構成され、強烈な印象が後まで引きずる男女の情の縺れによる悲劇で実際の事件に基づく。99年に開催された第23回香港国際映画祭のなかで、香港ニューウエーブ20周年を記念した「香港電影新浪潮~二十年後的回顧」というプログラムがあり、そこでツイ・ハークの第一作「蝶変」というホラーものと一緒に観た。
しかしそれは二度目で、じつはこの「瘋劫」を、日本語字幕付きでそれ以前にすでに観ている。それも福岡でだ。この「瘋劫」の字幕付きフィルムは、開館以来、福岡市総合図書館に所蔵されているのである。これは、福岡の貴重な宝であり、誇ることができる日本の財産といっても過言ではない。観られる機会があれば、眼を見開いてご覧いただきたい(受賞を記念した上映プログラムを9月に予定)。
アン・ホイ監督とは、覚えていただいていないに決まっているが、第25回香港国際映画祭でお会いしたのが最後。
その姿は、俳優として出演している、蔡明亮監督の「河」で観ることができる。

◎アン・ホイ監督の主な監督作品
「瘋劫」(79) 福岡市総合図書館映像ライブラリーに収蔵(『シークレット』)
「撞到正」(80) 香港ニューシネマフェス’89 にて上映
「胡越的故事」(81) 邦題『獣たちの熱い夜~ある帰還兵の記録』
「投奔怒海」(82) 邦題『望郷~ボートピープル』
「傾城之戀」(84)  邦題『傾城の恋』
「書劍恩仇錄」(87) 邦題『清朝皇帝・第一部:紅花党の反乱』
「香香公主」(87) 邦題『清朝皇帝・第二部:シルクロードの女王・香紀』
「今夜星光燦爛」(88) 香港ニューシネマフェス’89にて上映
「客途秋恨」(90) 邦題『客途秋恨』
「極道追蹤」(91) 邦題『極道追踪 暴龍in歌舞伎町』
「上海假期」(91)  アジアフォーカス・福岡映画祭’92にて上映
「女人,四十。」(95) 邦題『女人,四十。』
「阿金」(96) 邦題『スタントウーマン/夢の破片』
「去日苦多」(97) 山形国際ドキュメンタリー映画祭’97にて上映(『私の香港』)
「半生緣」(97) 第10回東京国際映画祭にて上映
「千言萬語」(99) 第13回東京国際映画祭協賛企画:香港映画祭にて上映
「幽靈人間」(01) 第3回東京フィルメックスにて上映
「男人四十」(01) アジアフォーカス・福岡映画祭2002にて上映
「玉觀音」(03) 邦題『デスパレート 愛されてた記憶』
「姨媽的後現代生活」(06) 第19回東京国際映画祭にて上映(『おばさんのポストモダン生活』 )
「天水圍的日與夜」(08) 第32回香港国際映画祭でワールド・プレミア

(2008年7月5日)

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