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17th BIFFから/第17回釜山国際映画祭のNew Currents Award受賞作「Kayan」 [レバノン]

第17回釜山国際映画祭のNew Currents Awardは、タイ映画「36」とともに、レバノン・カナダ合作の「Kayan」(2012)が受賞した。発表は最終日なので、帰国してから知った。作品はアミール・ナデリがエグゼクティブ・プロデューサーを務め、監督・脚本・編集が新人のMaryam Najafi。Najafi監督はイラン生まれの女性で、現在はカナダ・バンクーバーを拠点に活動しているそうだ。物語はそのバンクーバーの中東コミュニティにある、アラブ料理のレストランKayanを中心に展開されていく。
「新しい生活を守ろうと必死なひとりの女性の内面の優れた描写から、特別の共感を生み出したNajafi監督の才能」に対して賞が贈られたそうだが、このレストランは、Haninという中年のレバノン女性が営み、守っている。どういう経緯でHaninがカナダに渡り、女手ひとつでティーンエイジャーの二人の娘を育てているのか、その過去は語られない。自宅も描かれず、娘たちも、アラビア語やペルシャ語が飛び交い、水タバコがもうもうとしていて生演奏や踊る女性ダンサーの喧騒で溢れる店の奥の部屋で、ここの方が家よりもよく眠れるのと言って入り浸っている。描かれるのは、いまの一日一日である。
店が終わると常連客も従業員たちも帰っていき、誰もいなくなった店内に音楽を流し、一服するHanin。その姿が、誰にもみせることのない素の姿なのだろう。彼女は“スイートハート”と呼ぶ男性とテナント料について電話で語らう一方で、イラン人の男性客からも親しくされるようになる。そういう時にも、Haninはひとりの女性に戻ることはしない。客や従業員の様々な問題を解決し、金を稼いで店を維持していくことが彼女にとって使命であり、それに孤軍奮闘するHaninには、毎日が平穏ということはない。朝から晩まで忙しく、酒場なのだから困難も危機もある。
夜中に大泣きしながらクルマを飛ばす、しかし翌朝にはケロリとした表情をみせて、いつものように店を開ける。
レストランの女主人というと肝っ玉母ちゃんのように聞こえるかもしれないが、どんな社会でもそれは大変なことなのに、アラブ社会での女性の生き方としては、イバラの道だ。Najafi監督は、授賞理由どおり、それを極めて繊細に描いている。異国の地に生きる孤独な中東の移民の人々にその軒先を貸すレストランKayanの、その女主人じしんが自らの孤立感を隠しながら店を維持せんとする、悲しい皮肉がある。歌や踊り、タバコの煙で満たされた情緒溢れる空間は、表向き、とても魅力的に映っているというのに…。
10月8日、CGV Centum City 4にて。
(2012年12月2日)

Kayan.jpg

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