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第3回myFrenchFilmFestivalの「The Pirogue」 [セネガル]

2月17日で閉幕した第3回の「myFrenchFilmFestival.com」では、イスラエル・カナダとの合作「A Bottle in the Gaza Sea」のほかに、同じくコンペティション部門の「The Pirogue(小舟)」(2012)も観た。セネガルとの合作で、Dan Fainaru監督による。昨年の第65回カンヌ国際映画祭・ある視点部門出品作だそう。
セネガルは旧フランス領。舞台が中東やアフリカと、このフランス映画祭の作品群は、なかなか懐が深いと思う。
この「The Pirogue」は巻末に、以下のようなメッセージ・テロップが流れる。「2005年から2010年までの間に、西洋の魅力につられて、3万人ものアフリカ人が大西洋横断を試みたが、小舟による航行で5000人もの人々が命をおとした。この映画はそれらの人々に捧げる」と。
ドラマは、セネガルの首都である港町ダカールから、30人乗りのエンジン付小型ボートでスペインへの不法入国を目指した人々が、苦難を経て強制送還されるまでの航海を、80分ほどの尺で描いたコンパクトな小品である。全体的には典型と法則にかたどられた物語展開であることは否定できないが、船上という閉ざされた空間の描写のなかに、作り手のメッセージはしっかりと込められていた。
セネガルではヨーロッパへの不法移民が後を絶たないようで、うまく成功した者は立派な豪邸を手に入れている。渡航希望者を小さなボートで運ぶ、闇のビジネスも横行している。主人公は腕利きの漁師バイ・レイ。妻や幼い子どものために、30人もの命を預かる船長の仕事をやむなく引き受けた。
わたくしじしん興味深かったのは、高い渡航費を負担してヨーロッパを目指す人々が幾つもの部族にまたがっていて、互いに言葉も通じないこと。ギニアから来た、海を見たこともない集団もいる。しかし皆ムスリムであるので、困難が訪れるたび、肩もくっつきそうな狭い船内でアラーに祈るのだ。(正直に書くと、登場人物たちが皆同じように見え、船旅で着替えることもない服の色で、人物を識別して観た次第)
出航してすぐにパニックで狂い出す者、男ばかりの中、無賃でこっそり乗り込んだ女性など、30人のなかで人間関係の揉め事や意見の衝突は尽きない。出稼ぎやサッカー選手またはミュージシャン志望、知人を訪ねる、義足の注文とそれぞれの目的は様々。最初はノリノリだった旅も、だんだんと皆の表情が曇ってきた。
エンジントラブル、嵐との遭遇、食糧や燃料の枯渇といった問題に次々と襲われ、激しい嵐では転覆こそ免れたが、何名もの命が荒波に飲まれてしまった。また飢えて死ぬ者も出てきた。遺体を海中に葬る。口論を繰り返し、悪運をもたらした犯人探しに躍起になっていた勢いも失せ、半分ほどに減った人々ももう、息も絶え絶えである。
漂流の果て、バイ・レイたちは最後の力をふり絞って、祈るように唄う。そして翌朝、スペインの赤十字団体のヘリに救助されるが、生き残りの彼らが送り戻されて辿り着いたのは、結局のところ、出発した故郷セネガルだった…。
世界がこれまで描いてきたアフリカ世界のイメージと大きな隔たりはない。
しかしミクロな部分で印象に残った点がふたつほどあった。ひとつは冒頭の5分程の場面。野外客席の大観衆が興奮しながら囲んでいるのは、筋骨隆々のK1ファイターのような二人の男。賭事なのか?伝統的なレスリングのようで、上半身裸、パンツの上に締め込みをした身体で、何度も水を浴びたり、マグナムTOKYOのような熱いダンス・パフォーマンスをみせて大きな声援を受けている。そしてファイトが始まる…。これから同じ船で顔を合わせる男たちの出会いや紹介の背景に使われているだけで、このレスリングじたいの説明は以後出てこないだけに、余計に気になった。
もうひとつは、船長の仕事を引き受けて出航する前の晩の、バイ・レイと妻のシーン。性的な描写というものではないが、ベッドの上の二人が別れを惜しみ無事を祈るように、互いの素肌を自分の掌で、何度も何度もペタッペタッと触れ合うところに胸がジーンとした。ちょっとした場面だが、情感に満ちて観えた。

さて、オンライン映画祭について。映画もデジタルになって、オンラインでの視聴に対して親和性が高くなったのかもしれないが、知られざる映画を観ることができるチャンネルのひとつとしては、今後もっと盛んになればいいなと思う。
20年前ぐらいの専門書では、映画祭を、観光地型、都市型とカテゴライズしていたが、今やオンライン型映画祭もそこに付け加えられることだろう。例えば「松嶋×町山 未公開映画祭」のように課金制で配信することも、例えばギャガのオンライン試写会のように限定人数で配信することもできる点では、リアルな映画祭と形態は同じ。観客賞の投票管理も簡単。協賛スポンサーも獲得可能だし、「myFrenchFilmFestival」では公式カタログをダウンロードしてiBooksに入れてパラパラと読めた。ライブ配信だと、映画製作者のティーチインも不可能ではないのかな。
まあ、映画祭とは書いたが、要は未公開映画のオンデマンド配信なので、今や普通のことなのだけれど、マニアックな人間としては、映画祭と名乗ってもらえると必要以上にそそる。観光地型、都市型の映画祭の主体には無理な話だが、ユニフランスのような、各地の機関が自国映画の振興のためにやってくれたらいいなあ。
PCの画面サイズというのはもちろんマイナスだが、観る機会が与えられるだけで結構。今回、航海物の「The Pirogue」は、ダウンロードしたタブレット端末を持って、わざわざ海岸まで持って行ってそこで観た。
(2013年3月25日)

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