So-net無料ブログ作成
サモア ブログトップ

トランスジェンダーも活躍したワールドカップ南太平洋地区予選までの記録映画 [サモア]

恥ずかしいことにサッカーには全く興味がないので、いま開催中のFIFAワールドカップの試合じたいはまず観ないのだが、開催国ブラジルや日本の対戦相手国などの風土や歴史、文化などを紹介するようなテレビ番組はけっこう楽しんだ。サッカーという世界一の関心事を触媒にして、国際理解を深めるようなきっかけができることは、たいへんにいいことだと思う。
2週間限定で劇場公開されていたドキュメンタリー「ネクスト・ゴール! 世界最弱のサッカー代表チーム 0対31からの挑戦」(イギリス、2014)も、その延長線のお勉強だと思って観たが、オーソドックスな構成のドキュメンタリーで観やすかった。事実なのでネタバレということもないだろうから書くが、FIFAランキング最下位と、世界最弱に位置づけられていた「アメリカ領サモア」の代表チームが、熱血のオランダ人監督を迎え入れ、2014年ワールドカップブラジル大会の南太平洋地区予選でついに初勝利を果たし、ランキングを10年以上定位置だった一番下の204位から186位にまで押し上げていくサクセスストーリーだ!
最弱と言われる屈辱的な証が、2001年当時のワールドカップ地区予選でオーストラリアを相手に前半15点後半16点の失点(3分ごとにゴールされる計算!)で、国際Aマッチ史上最大点差の0対31で大敗したこと。このことが米領サモア代表チームのトラウマになっていた。
よく認識していなかったのだが、独立国サモアの大きな島の東側の小さい島々が米領サモア。サモアの方のことはここでは触れられていないのでよくわからないが、米領サモアは人口5万人、知事がいて自治はされている。しかし財政的に苦しく、人口規模からみても当然だが、代表チームの選手は皆アマチュア。
練習が終わると仕事へ学校へと向かう選手たちの個々のキャラクターをみていくと、とてもピュアな国民性であることがよくわかる。ラグビーのNZ代表が試合前に相手を威嚇するマオリの舞いに似て、米領サモアの選手たちもポリネシア流のそれで気持ちを高ぶらせ、連帯感も強く感じられる。ただし、やはりレベルから言っても同好会的な雰囲気は否めない。
2001年の大敗の後も、散り散りになった元代表たちを再結成させ、心理学者によるコーチングを受けさせたり、ボランティアコーチを招聘したりして国際試合に挑むが、進歩はない。ついに米国にSOSを出して、オランダ人のトーマス監督が派遣されてきたが、プロフェッショナルな監督とメンタル面に弱さのある選手たちとの意識の間には、大きなへだたりがあった。
トーマス監督も鬼というわけではなく、サッカーの練習に向かう途中に交通事故で亡くなった18歳の娘がいたということも明かされ、チームに実力が徐々についていく過程は、カメラが押さえていく紛れもない事実である。
初勝利を挙げたブラジル大会の南太平洋地区予選は、米領サモア、サモア、トンガ、クックによるリーグ戦。このあたりから実戦映像なので、ここまでの道のりを見せられた分、ちょっと感動的である。
米領サモアは、初戦のトンガ戦から優勢に試合を進めていく。これまで229失点に対して得点0だったチームがついにゴールを決める。2対0となってからは、スタミナ切れ、体力の限界かと相当ハラハラさせながらも、ついに初勝利! カメラはトーマス監督が娘の形見の帽子をかぶって指揮をとっていたことをさりげなくとらえる。
二戦目のクック戦は1対1の引き分け。最終戦に勝てば4チームのトップに立ち、二次ラウンド進出という希望を抱いて迎えたサモア戦は、惜しくも0対1で敗退となるが、予選での戦績は、神の恩恵と呼ぶには十分過ぎるものだった。トーマス監督にとってはキャリアアップに繋がり、米領サモアチームにとっては、未来への道が開けたのだ!
さて本作で注目すべきは、いや個人的には彼女(彼)中心に描いて欲しいと思ったのが、控えのジャイヤ選手だ。ワールドカップ予選に出場した最初のトランスジェンダーだということだ。作品のなかで、ポリネシアには「第三の性」の文化があると説明される。インドのヒジュラのようなものだと思う。メイクもバッチリで、普段はハワイ大学に通い、女性として暮らしていて、代表チーム結成にあたって呼び戻されるのだそうだ。彼女こそ、ピュアな国民性の象徴だ。しかし、控え選手の彼女が初勝利をあげるトンガ戦では先発出場し、驚くべき活躍をみせ勝利に貢献する。エンドロールあたりで、完成したこのドキュメンタリーのプレミア上映のためのドレス選びに励むジャイヤ(本名ジョニー)は、まるで主演女優のようだ。
(2014年7月3日)



nice!(1)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画
サモア ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。