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第5回福岡トリエンナーレの短編劇映画 [ブータン]

第5回福岡トリエンナーレ(福岡アジア美術館)で、ブータンの映像作家による短編映画を観た。デチェン・ロデルという女性監督の「Original Photocopy of the Happines」(2011)と「Heart in the Mandala」(2013)の2作品。美術展で展示される映像作品はそもそも実験的なアートが多く、繰り返し流されているどこの部分から観始めても差し障りのないような内容のものが多いのだが、今回の2作品はそれぞれ、20分と40分のストーリードラマだ。会場の一角を暗く囲って椅子を五つ六つ並べたような環境なので、正直言って鑑賞方法は客任せだ。
客の往来がせわしなくて気が散るのは仕方ないにしても、リピート上映の切れ目は何時何分なのかを監視の係員に尋ねてもわかりませんと淡白に返されるので、「Heart -」のラスト10分を観てからもう一本の「Original -」、そして再度「Heart -」を頭から観るという、入替なし二本立ての往年の映画館のようなありさまを、結果的に、のんびりアートを楽しもうとフリーパス券を買った僕向きのスタイルなのだと納得して臨んだ。絵画一枚には10秒でも10分でも好きなように時間を費やせるが、40分の映像にはきっちり40分が必要であるから。
さてブータンは幸福立国として知られているけれども、どちらの作品も決して幸せとは断定できない話。別に、政府が取り組むGNH(国民総幸福)を基礎にした国づくりの現状に対しての反論とまではいわないが、一見、アンチテーゼに映る。
国が幸せにしてくれるわけではないので、人々は困難を乗り越えて幸せをつかまなければならないが、一方で困難は運命でもある。その点で「Heart -」はストレートな作品である。学生だった8年前にバイト先の工事現場で両足切断の大怪我をして、内定していた公務員の道を棒に振った兄。そのために妹も高校中退を余儀なくされた。その妹も年頃になってけっこう年上のフィアンセができて、兄に紹介するために家へ連れてくるが、その恋人こそ兄の事故当時の責任者だったと発覚する。兄の口から、堰を切ったように恨みつらみが溢れ出てきて、妹の幸せは、砂の城のようにいとも簡単に崩れていく。お腹の子は自分で育てると妹が宣言したところで、現代的なポップスの流れるエンドロールとなる。
チベット仏教では、不幸は神や悪霊によるものと考えられていると聞くし、指標によって幸せの概念は変わり、経済力だけでは幸福度は測れない。われわれとは異なる価値観を求めるブータンにおいて、女手ひとつで子を育てていくという選択は不幸と言い切れるのか、言い切れないのか、この監督の投げかけがある。
「Original -」も母子家庭の話である。父親の身分証のコピーがないと進級できないということで、16歳の少女が、画家、音楽家、ジャーナリスト、医者を順に訪ねては尋問をして、自分の父親であることを認めさせようとするアクティブな姿をドキュメンタリー風に描いている。登場する男たちが身を置くのは伝統画や伝統音楽の世界、ついでに書くと「Heart -」の兄も彫刻師と、ブータンらしい文化描写も欠かしていない。
ところで、最後に出てくる医者が、貴方は私の父親ではないかと不躾に訊く少女に対して、心療内科を紹介しようかと返す場面がある。以前、幸福立国ブータンには、必要があるにもかかわらず精神科の病院が国にひとつしかないという海外紙の記事を読んで、ホンマかいなと感じたことを思い出した、本作には関係ないけれども。
予算のショートフィルムとはいえ、「Original Photocopy of the Happines」と比べると「Heart in the Mandala」の方は一本調子で、デチェン・ロデル監督が将来長編を撮るのであれば、課題はあると思った。
(2014年11月2日)

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