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18th BIFFから/モンゴル映画「Yellow Colt(黄色い仔馬)」と「Remote Control(リモコン)」 [モンゴル]

第18回釜山国際映画祭で、二本のモンゴル映画の最新作を観た。ひとつは10月5日にMegabox Haeundae 2で観たKhoroldorj Choijoovanchig監督の「Yellow Colt」(2013)のインターナショナル・プレミア。Coltは拳銃ではなくて、黄色い仔馬。幼い頃に叔父さんに引き取られて育てられてきた少年Galtが主人公。叔父を慕い、一緒にナーダムの競馬に出ることを夢みていた少年が、その叔父が亡くなって両親に引き取られるところから映画は始まる。沈んだ心のGaltと、どこからか迷い込んできた黄色い仔馬とのふれあいを、詩情豊かに描いた作品だ。モンゴルの自然や文化風俗、音楽まで大いに満喫できる、これぞモンゴルといった場面に溢れている。
それを観客誰もが感じたからだろう、草原に馬といった、絵心たっぷりのシーンになると、何人もの人が同時に携帯を取り出して一斉にスクリーンの撮影を始めたではないか! その行為の繰り返し! 「いまモンゴル映画を鑑賞中」とネットで公開したいのだろうか? 今年のBIFFのオープニングトレーラーには、NO PHOTOという注意書きがわざわざ出てきたが、そういう方が実際に相当いらっしゃることがよくわかった。みなさんのシャッターチャンスの良さは認めるけれども…。
さて少年は、走りはいいが群れには馴染まない黄色い仔馬との練習を繰り返していく。そういう仔馬と自分の姿が重なるのだろうか、少年と仔馬は草原を駆けながら一体となっていく。仔馬が一時いなくなるなど、Galtは試練にも出くわすが、競馬でトップになり、仔馬との絆を深めながら成長していくのである。ラストは少年と仔馬が駆ける映像のストップモーション。最後まで美しいこの作品のみごとな撮影は、エンドロールに出てきたが、カトウ・ヨウスケ氏と日本人名だった。
この「Yellow Colt」が、観客が求めるだろうモンゴルらしい背景舞台で普遍な少年の感受を映し出した作品だとすれば、10月4日にBusan Cinema Center Cinema 1で観た、モンゴル=ドイツ合作の「Remote Control」(2013)のワールドプレミアは、今年のNew Currents Awardを受賞したとおり、集合住宅やリモコンなどの現代的な様相を取り入れた作品だ。Byamba Sakhya監督の第一作だが、そのフィルモグラフィーをみると、日本でも劇場公開されたドキュメンタリー「ステイト・オブ・ドッグス」(1996)で撮影を担当されている人物のよう。
「Remote Control」は、荒んだ家を飛び出した少年の、偶然知り会った歳上の女性への心の囚われが物語の軸になるが、モンゴルらしさも随所からあふれてくる、とてもおもしろい作品だ。モンゴルらしいといえば大草原があげられるだろうが、その大草原の上に果てしなく広がっている大空も、同じようにモンゴルの特徴的な風景なのだということにハッと気付かされるのが「Remote Control」の冒頭。そこに思わず何かを飛ばしたくなるような広い青空に、パラシュートの少年僧が飛び立つ! これは劇中に時々登場する、ティーンの主人公Tsogooの空想。何を象徴しているのかなどと書くのは野暮だろう。
地方の村に住む彼は、酪農の家から乳を預かって鉄道を使って都会まで行商に行く仕事をしている。飲んだくれの父や冷たい継母との生活に辟易したTsogooは、家を出て、いつも乳を売りに行っている街の団地の屋上につぎはぎのテントを作り、そこに寝泊まりするようになった。
この屋上という設定が、またモンゴルらしいと言えないだろうか。そこではゲルの生活のように空が頭上に広がり、四方を見渡すことができるのだ。望遠鏡を使うと、そこからは周囲の棟の住人たちの様々な生活を、それぞれの窓越しに覗き見ることができる。幸せそうな家庭の姿がそこにはある。
Tsogooが乳を預かって毎日往復する列車の窓からの景色が、都会から田舎へ、農村から都会へと移っていく。その対比が単に景色としてではなくて、ライフスタイルの違いとしても表現されている。
そのTsogooには、特に気になる部屋があった。相当裕福な暮らしなのだろう、部屋の真ん中に大画面テレビ(80インチあるかな?)が置かれている。そこの住人は子供のいない若い夫婦。何が原因なのだろう、夫婦仲にひびが入り、喧嘩を繰り返している様子が窓越しに見える。部屋にはまた、手を繋いだ男から空に向かって振り回されている女を描いた民話調の絵が飾られていて、その絵の構図がこの夫婦の関係を象徴していることが、妻の態度から何となく読み取れる。この妻は、部屋にいるとき何のためらいもなく(当たり前だが)セクシーな下着姿でうろつく。
そういう性的な魅力が勿論なのだろうが、Tsogooは屋上から覗き見るこの女性のことが気になってきて仕方なかった。そこでテレビのリモコンを電器屋から盗んできて、この夫妻の部屋のテレビを遠隔操作してみると、ちゃんと動くではないか! 自分の思いどおりにスイッチが入る、チャンネルが変わる。そしてここからTsogooは大胆な行動をとるようになる。乳の行商で妻に声を掛け、部屋の中まで配達に入ったり、匿名で妻のためにラジオに曲のリクエストをしたり、得意の絵を描いて贈ったり…と。
Tsogooがそんなに調子よく、憧れの女性の心をコントロールするなんてことは結局はできはしないが、自分が生まれ育ったモンゴルの田舎村から外側の世界につながりを持とうとするティーンの姿を、爽やかに鮮やかに、ユーモアとファンタジーを織り交ぜて描いた「Remote Control」は、モンゴル映画の新たな可能性をみせる傑作だと思える。
(2013年10月28日)

リモコン.jpg

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映画「セチンハンルー・チンギスハーン最後の末裔」について [モンゴル]

もう1か月以上も前の、NHK・BS1「アジアクロスロード」1月29日の放送で、モンゴル映画の情報を取り上げていた。出掛けた先で偶然に番組を見ただけで、録画をしていたわけでもなく、メモをとっていたわけでもないので、断片的な記憶が残っているだけなのだが、頭の中から消えてしまわないうちに書き残しておこうと思う(もう1月のことだけれど)。
映画の題名だけはしっかりと覚えていて「セチンハンルー・チンギスハーン最後の末裔」。NHKの解説員と静岡大学の内モンゴル出身の先生がスタジオ出演して、作品のシーンを交えながら、映画を紹介した。
耳に残っているのは、これがモンゴルと内モンゴルとの初めての合作映画だと語られていたこと。監督は確か中国側(名前を忘れてしまった!)で、撮影は、モンゴルの名カメラマンであり映画監督の、L.シャラブドルジ氏。
さて、福岡のアジアフォーカスは、モンゴル映画のショーケース的な役割を当初から果たしていて、過去からのモンゴル映画の名作を、東京、ヨーロッパへと発信してきた。シャラブドルジ氏は、近年のモンゴル映画の主要な作品「マンドハイ」(88)「風雲の聖者」(92)「ぼくはモンゴルの子」(92)「新文字先生」(98)などを手掛けてきた重要人物で、福岡映画祭には何度も来られているし、アジアフォーカス10回記念の東京イベントでもゲスト参加され、小生はそのときに氏のアテンドを担当したのだけれど、映画上映にはモンゴル力士も来られて、上映会場のパイプ椅子ひとつで大丈夫かなあと心配したことをよく覚えている。
ということで、シャラブドルジ氏の健在ぶりを確認できた、偶然見たこのNHKの番組のことを引き摺って、いま書いているわけである。
この「セチンハンルー」は実話の映画化で、英雄チンギスハーンの血を継ぐ32代目の直系子孫になる、内モンゴルの最後の王女セチンハンルーの、中国建国の激動の時代、波瀾に満ちた人生を描いているそうだ。モンゴルでも2月に劇場公開と確か紹介していたが…。
(2010年3月7日)

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韓国・モンゴル・フランス合作「Desert Dream」 [モンゴル]

これは、第57回ベルリン国際映画祭コンペ部門にも出品された傑作だ(原題「HYAZGAR」)。人間の生が、乾いた大地を背後に置いた映像から静かに、強く浮かび上がってくる。語りたいことがいくつもあるので、ひとつずつ述べたい。
まず内容だ、モンゴルを舞台にした脱北者の物語である。息子チャンホを連れたまだ若い女性スンヒ、北朝鮮のこの母子が、中国と国境を隔てるモンゴルの小さな砂漠の村にたどり着く。そして、愛想をつかされて妻子と別居したばかりの男フンガイのパオに転がり込む。フンガイは、口数少ないモンゴル男だ。この三人の奇妙な共同生活が始まるが、それは乾いているようでもあり、血が通ったようでもある。
砂漠での植樹に固執するモンゴル男と、北朝鮮から遠路を逃れてきた母子の関係を、独特の映像表現で描くチャン・リュル監督。朝鮮族(韓国系中国人)で在中3世、もともと中国文学の教授で、映画製作を一切学ばずに中国を拠点に映画を撮り続ける異能の作家だ。数々の映画祭賞を獲得した前作の「キムチを売る女」(05)が日本でも近く劇場公開予定だ(本作と同様にスンヒとチャンホという名の母子が登場する)。中国の少数民族のひとつである朝鮮族を睨んだ作品を、一貫して取り続ける、今後もその活動を追い続けねばならない映像作家である。
スンヒ役のソ・ジョンはキム・ギドク監督の衝撃作「魚と寝る女」の釣り場の女管理人役だった女優。そしてモンゴル男フンガイを演じるのが、モンゴル映画界の雄O.バトウルズィーである。モンゴル国内で活動する映画人としては、いま最も傑出した一人といえよう。もともとは俳優だが、監督作「心の言葉」「逃亡者トゥムル」で佐藤忠男氏に見出され、アジアフォーカス・福岡映画祭で上映されて国際的に飛躍した。2006年には監督作「あなたがいない時」で同映画祭に招かれた。これは韓国を舞台にした出稼ぎのモンゴル男の物語だったが、来日時に、俳優として韓国映画に出演するプロジェクトがあると静かに語っていた。彼の俳優としての作品を見たのは本作が初めてだが、とても好きだ。彼のようなタイプ、モンゴル映画でときどき見せつけられる鮮烈なダンディズムにはなんともしびれてしまう。野生動物の如きセックスシーンもあったけれど、共同プロデューサーとしてクレジットされている彼の奥さんサラントヤーにとっては何てことないのかしら。
さて昨今、国際関係の話題は、北朝鮮中心にまわっている(イランもだけれど)。北京五輪を控えた中国当局の治安対策のため、脱北ルートはこれまでの中国から韓国入りするケースから、モンゴルや東南アジア経由のケースが増えてきたと報道されている。そんなことも少し思い出しながら観た「Desert Dream」だが、とにかく、ただただ圧倒された。そしてまだ何度でも観たい。
(3月20日/香港・時代廣場UA4院)


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