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2016年の良かった映画 [そのほか]

外国映画

★とくに良かった
消えた声が、その名を呼ぶ(ファティ・アキン監督/ドイツ=フランス=イタリア=ロシア=ポーランド=カナダ=トルコ=ヨルダン)
山河ノスタルジア(賈樟柯監督/中国=日本=フランス)
素敵なサプライズ ブリュッセルの奇妙な代理店(マイケ・ファン・ディム監督/オランダ)
或る終焉(マイケル・フランコ監督/メキシコ=フランス)
ブルックリン(ジョン・クローリー監督/アイルランド=イギリス=カナダ)
シング・ストリート 未来へのうた(ジョン・カーニー監督/アイルランド=イギリス=アメリカ
ハドソン川の奇跡(クリント・イーストウッド監督/アメリカ)
とうもろこしの島(ギオルギ・オバシュビリ監督/ジョージア=チェコ=フランス=ドイツ=カザフスタン=ハンガリー)
オマールの壁(ハニ・アブ・アサド監督/パレスチナ)
エル・クラン(パブロ・トラペロ監督/アルゼンチン)
エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に(リチャード・リンクレイター監督/アメリカ)

☆良かった
キャロル(トッド・ヘインズ監督/イギリス=アメリカ=フランス)
ヘイトフル・エイト(クエンティン・タランティーノ監督/アメリカ)
ボーダーライン(ドゥニ・ビルヌーブ監督/アメリカ)
ヴィクトリア(ゼバスティアン・シッパー監督/ドイツ)
帰ってきたヒトラー(デビッド・ベンド監督/ドイツ)
アスファルト(サミュエル・ベンシェトリ監督/フランス)
ジュリエッタ(ペドロ・アルモドバル監督/スペイン)

[日本映画]

★とくに良かった
リップヴァンウィンクルの花嫁(岩井俊二監督)
64-ロクヨン-前編・後編(瀬々敬久監督)
ディストラクション・ベイビーズ(真利子哲也監督)
日本で一番悪い奴ら(白石和彌監督)
シン・ゴジラ(庵野秀明監督)
君の名は。(新海誠監督)
オーバー・フェンス(山下敦弘監督)
淵に立つ(深田晃司監督)
湯を沸かすほどの熱い愛(中野量太監督)
この世界の片隅に(片渕須直監督)

☆良かった
俳優 亀岡拓次(横浜聡子監督)
海よりもまだ深く(是枝裕和監督)
団地(阪本順治監督)
永い言い訳(西川美和監督)
お父さんと伊藤さん(タナダユキ監督)

※ 1月1日から12月31日までに劇場で観た封切の新作133本から(映画祭上映などは除く)。順は年頭からの鑑賞順です

(2016年12月30日)

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2015年のとくに良かった映画 [そのほか]

[日本映画
0.5ミリ(安藤桃子監督)
さよなら歌舞伎町(廣木隆一監督)
味園ユニバース(山下敦弘監督)
幕が上がる(本広克行監督)
がむしゃら(高原秀和監督)
海街diary(是枝裕和監督)
みんなの学校(真鍋俊永監督)
きみはいい子(呉美保監督)
この国の空(荒井晴彦監督)
沖縄 うりずんの雨(ジャン・ユンカーマン監督)
(私的な次点)
夫婦フーフー日記(前田弘二監督)
お盆の弟(大崎章監督)
ロマンス(タナダユキ監督)

外国映画]
天空からの招待状(チー・ポーリン監督/台湾)
ソニはご機嫌ななめ(ホン・サンス監督/韓国
KANO 1931海の向こうの甲子園(マー・ジーシアン監督/台湾)
ハン・ゴンジュ 17歳の涙(イ・スジン監督/韓国)
バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)(アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督/アメリカ
ザ・トライブ(ミロスラブ・スラボシュピツキー監督/ウクライナ)
サンドラの週末(ジャン=ピエール・ダルデンヌ監督・リュック・ダルデンヌ監督/ベルギー=フランス=イタリア)
追憶と、踊りながら(ホン・カウ監督/イギリス
雪の轍(ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督/トルコ=フランス=ドイツ)
フレンチアルプスで起きたこと(リューベン・オストルンド監督/スウェーデン=デンマーク=フランス=ノルウェー)
共犯(チャン・ロンジー監督/台湾)
ナイトクローラー(ダン・ギルロイ監督/アメリカ)
僕たちの家に帰ろう(リー・ルイジュン監督/中国
独裁者と小さな孫(モフセン・マフマルバフ監督/ジョージア=フランス=イギリス=ドイツ)
(私的な次点)
オオカミは嘘をつく(アハロン・ケシャレス監督・ナヴォット・パプシャド監督/イスラエル)
ブルー・リベンジ(ジェレミー・ソルニエ監督/アメリカ=フランス)
悪党に粛清を(クリスチャン・レブリング監督/デンマーク=イギリス=南アフリカ)
ヴィジット(M・ナイト・シャマラン監督/アメリカ)

※ 1月1日から12月31日までに劇場で観た封切の新作130本から(映画祭上映などは除く)。順は年頭からの鑑賞順です

(2015年12月30日)

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2014年の良かった映画 [そのほか]

[日本映画
ファルージャ(伊藤めぐみ監督)
Seventh Code(黒沢清監督)
東京難民(佐々部清監督)
愛の渦(三浦大輔監督)
白ゆき姫殺人事件(中村義洋監督)
そこのみにて光輝く(呉美保監督)
ぼくたちの家族(石井裕也監督)
私の男(熊切和嘉監督)
ある優しき殺人者の記録(白石晃士監督)
超能力研究部の3人(山下敦弘監督)
(次点)
WOOD JOB!〜神去なあなあ日常(矢口史靖監督)
僕はもうすぐ十一歳になる。(神保慶政監督)
STAND BY ME ドラえもん(八木竜一監督・山崎貴監督)
イン・ザ・ヒーロー(武正晴監督)
舞妓はレディ(周防正行監督)
滝を見にいく(沖田修一監督)

外国映画]
ゼロ・グラビティ(アルフォンソ・キュアロン監督/アメリカ
ドラッグ・ウォー 毒戦(ジョニー・トー監督/中国=香港)
光にふれる(チャン・ロンジー監督/台湾=香港)
鉄くず拾いの物語(ダニス・タノヴィッチ監督/ボスニア・ヘルツェゴヴィナ=フランス=スロヴェニア)
父の秘密(マイケル・フランコ監督/メキシコ)
ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅(アレクサンダー・ペイン監督/アメリカ)
フルートベール駅で(ライアン・クーグラー監督/アメリカ)
アデル、ブルーは熱い色(アブデラティフ・ケシシュ監督/フランス)
罪の手ざわり(ジャ・ジャンクー監督/中国=日本)
her/世界でひとつの彼女(スパイク・ジョーンズ監督/アメリカ)
めぐり逢わせのお弁当(リテーシュ・バトラ監督/インド=フランス=ドイツ)
消えた画 クメール・ルージュの真実(リティー・パニュ監督/カンボジア=フランス)
6才のボクが、大人になるまで。(リチャード・リンクレイター監督/アメリカ)
西遊記 はじまりのはじまり(チャウ・シンチー監督/中国)
メビウス(キム・ギドク監督/韓国
ゴーン・ガール(デヴィッド・フィンチャー監督/アメリカ)
イロイロ ぬくもりの記憶(アンソニー・チェン監督/シンガポール)
(次点)
オンリー・ゴッド(ニコラス・ウィンディング・レフン監督/デンマーク=フランス)
プリズナーズ(ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督/アメリカ)
メトロ42(アントン・メゲルディチェフ監督/ロシア)

※ 1月1日から12月31日までに劇場で観た封切の新作132本(昨年は134本)から(映画祭上映などは除く)。順は1月からの鑑賞順です

(2014年12月31日)

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2013年のわたくしのベスト映画 [そのほか]

[日本映画
フラッシュバックメモリーズ3D(松江哲明監督)
みなさん、さようなら(中村義洋監督)
おだやかな日常(内田伸輝監督)
舟を編む(石井裕也監督)
先祖になる(池谷薫監督)
さよなら渓谷(大森立嗣監督)
共喰い(青山真治監督)
凶悪(白石和彌監督)
もらとりあむタマ子(山下敦弘監督)

(次点)
くちづけ(堤幸彦監督)
フィギュアなあなた(石井隆監督)
江ノ島プリズム(吉田康弘監督)

外国映画]
レ・ミゼラブル(トム・フーパー監督/イギリス
ゼロ・ダーク・サーティ(キャスリン・ビグロー監督/アメリカ
東ベルリンから来た女(クリスティアン・ペッツォルト監督/ドイツ)
塀の中のジュリアス・シーザー(パオロ・タビアーニ監督,ビットリオ・タビアーニ監督/イタリア)
愛、アムール(ミヒャエル・ハネケ監督/フランス=ドイツ=オーストリア)
ジャンゴ 繋がれざる者(クエンティン・タランティーノ監督/アメリカ)
汚れなき祈り(クリスティアン・ムンジウ監督/ルーマニア=フランス=ベルギー)
天使の分け前(ケン・ローチ監督/イギリス=フランス=ベルギー=イタリア)
プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ(デレク・シアンフランス監督/アメリカ)
嘆きのピエタ(キム・ギドク監督/韓国
3人のアンヌ(ホン・サンス監督/韓国)
もうひとりの息子(ロレーヌ・レビ監督/フランス)
キャプテン・フィリップス(ポール・グリーングラス監督/アメリカ)
コールド・ウォー(リョン・ロクマン監督,サニー・ルク監督/香港)

(次点)
ライジング・ドラゴン(ジャッキー・チェン監督/香港=中国
きっと、うまくいく(ラージクマール・ヒラーニ監督/インド)
建築学概論(イ・ヨンジュ監督/韓国)
オーガストウォーズ(ジャニック・ファイジエフ監督/ロシア)

※ 1月1日から12月31日までに劇場で観た封切の新作134本から選びました(映画祭上映などは除く)
※ 順は1月からの鑑賞順です

(2013年12月31日)

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2012年のわたくしのベスト映画 [そのほか]

[日本映画
サウダーヂ(富田克也監督)
わが母の記(原田眞人監督)
ポテチ(中村義洋監督)
苦役列車(山下敦弘監督)
桐島、部活やめるってよ(吉田大八監督)
かぞくのくに(ヤン・ヨンヒ監督)
あなたへ(降旗康男監督)
鍵泥棒のメソッド(内田けんじ監督)
アウトレイジ ビヨンド(北野武監督)
北のカナリアたち(阪本順治監督)
ふがいない僕は空を見た(タナダユキ監督)

(映画賞でいうところのスペシャルメンション)
ロボジー(矢口史靖監督)
僕達急行 A列車で行こう(森田芳光監督)
シグナル 月曜日のルカ(谷口正晃監督)
その夜の侍(赤堀雅秋初督)

(がっかり賞)
私の奴隷になりなさい(亀井亨監督)

外国映画]
サラの鍵(ジル・パケ=ブレネール監督/フランス
ドラゴン・タトゥーの女(デビッド・フィンチャー監督/アメリカ
ポエトリー アグネスの詩(イ・チャンドン監督/韓国
灼熱の魂(ドゥニ・ビルヌーブ監督/カナダ=フランス)
少年と自転車(ジャン=ピエール・ダルデンヌ監督,リュック・ダルデンヌ監督/ベルギー=フランス=イタリア)
ル・アーブルの靴みがき(アキ・カウリスマキ監督/フィンランド=フランス=ドイツ)
預言者(ジャック・オーディアール監督/フランス)
サニー 永遠の仲間たち(カン・ヒョンチョル監督/韓国)
ルート・アイリッシュ (ケン・ローチ監督/イギリス=フランス=ベルギー=イタリア・スペイン)
ビースト・ストーカー/証人(ダンテ・ラム監督/香港)
オレンジと太陽(ジム・ローチ監督/イギリス=オーストラリア)
最強のふたり(エリック・トレダノ監督,オリビエ・ナカシュ監督/フランス)
プンサンケ(チョン・ジェホン監督/韓国)
ライク・サムワン・イン・ラブ(アッバス・キアロスタミ監督/日本=フランス)
桃さんのしあわせ(アン・ホイ監督/中国=香港)
イラン式料理本(モハメド・シルワーニ監督/イラン)

(映画賞でいうところのスペシャルメンション)
デビルズ・ダブル~ある影武者の物語(リー・タマホリ監督/ベルギー)
スーパー・チューズデー(ジョージ・クルーニー監督/アメリカ)
ドライヴ(ニコラス・ウィンディング・レフン監督/アメリカ)
ハーバー・クライシス 湾岸危機(ツァイ・ユエシュン監督/台湾)

(がっかり賞)
クーリエ~過去を運ぶ男(ハニ・アブ・アサド監督/アメリカ)

※ 1月1日から12月31日までに劇場で観た封切の新作134本から選びました(映画祭上映などは除く)
※ 順は1月からの鑑賞順です

(2012年12月31日)



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石原裕次郎主演のアジアを舞台にした映画3作品 [そのほか]

日活100周年おめでとうございます。記念してWOWOWで放送された石原裕次郎代表作30本特集を、未見の作品を中心に、必死で観た。縦軸は日活の看板スター裕次郎なのだけれども、1960年代のアジア各地を舞台にした日本映画という横軸をとおして、3作品を今回観た順に並べてみると…

「アラブの嵐」(61)は、わたくし大好きな中平康監督の、モダニスト中平らしいちょっと気取った作品で、“アラブの春”ではないが、中東を舞台にした1960年ごろの(架空の)民族独立運動を絡めたアクションものである。いやアクションというか、ベイルートの空港で取り違えられた旅行鞄(独立活動に関する重要なマイクロフィルムが入っている!)をめぐる、ヒッチコックからの借景ありありのドタバタ喜劇だ。
旅先の大会社の御曹司(裕次郎)が、このマイクロフィルム入りの鞄を持たされて、それを追う独立活動グループと独立を阻止する帝国主義グループの間の、追いつ追われつの争奪戦に巻き込まれていく。広大なナイルや砂漠、ピラミッド、ルクソールの遺跡と、スター裕次郎が駆け巡るのである。
当時のカイロの街の実景も垣間見られてちょっと素敵だが、ロケーション的にもやや強引な展開は、撮影を許可・協力した当時のエジプト側の意向の影響だろうか。だから、正直いうと、裕次郎が中東の抗争の渦に巻き込まれて以降は、もたついた感じがあって、ちょっと苛ついてしまった。
しかし、巨大ピラミッドに対して「九州のボタ山と変わんねえや」という言い放つ裕次郎が、映画の“相手役”としてがっぷり四つに組んだ、エジプト5000年の歴史は、日活黄金期の海外ロケにふさわしいと思う。できあがりは大作だ。
ベリーダンサーは仮の姿で、本当は独立運動の活動家だという女性ライラ役で裕次郎と共演しているシャディアは、当時のエジプト映画界の代表的女優(代表作「ナイルのほとりの物語」)だそうで、劇中、歌と踊りも披露しているが、一方で裕次郎も「月の沙漠」やドジョウすくいをみせている。中華や東南アジアものだと、日本の役者が現地人を演じたりするところもあるが、アラブとなると、さすがにそういうことはない。

「金門島にかける橋」(62)は、台湾の中央電影公司との合作の大作で、中台間の戦乱を背景にした反共メロドラマだ。裕次郎は世界一周船の医師で、4年前に東京で出会った台湾女性と再会するのだが、再会するところは1958年、台湾海峡に浮かぶ、中国廈門市と海を隔てて接する金門島で、台湾国防の最前線である。時代的にも対岸の中国から激しい砲撃を受け、政治的な緊張が高まっていたころで、すさまじい爆撃場面を背景に、裕次郎と台湾女性の悲恋が描かれる。実際のロケ場所など詳しくはわからないが、相当の迫力をもって、中国軍の砲弾が台湾の漁村や、愛し合う二人を打ち砕く。ただただ悲劇である。
その二人が一時、台北でひとときを過ごす場面があって、当時の台北站等の街並みがみられる他、台湾軍の大掛かりなパレードの光景も登場する。
裕次郎の相手役・麗春を初々しく一心に演じている女優は王莫愁。その後、台湾初のカラー・シネスコ作品にして健康写実路線の代表作「海辺の女たち」(63)のヒロインとなった。麗春の妹的な役どころの唐寶雲の方は、のちに「あひるを飼う家」(65)に主演している。二本とも福岡市総合図書館にフィルムが収蔵されている。それからちょっとマニアックな視点だが、金門島の漁師役に、「王哥柳哥」シリーズの太っちょ男優を見つけることができる(このシリーズわたくしは未見だが、そのスチール写真を一度みたら忘れられないルックス)。
島の漁師の組合長は大坂志郎で、日本軍占領下の日本語教育を受けているということからか、裕次郎との会話は日本語で通しているが、女優たちも不慣れな日本語セリフをしゃべり、それが一層初々しく映るのだ。
台湾の映画評論家・張昌彦氏が、「金門島-」や大映との合作「秦・始皇帝」の経験によって技術スタッフが養成され、台湾映画界は大道を歩み始めたと著述していることが思い出される。監督は松尾昭典。

「太陽への脱出」(63)は、舛田利雄監督による異国情緒あふれるアクションもの。裕次郎が、日本人としての過去を捨て、タイ・バンコクを拠点に日本製武器の密売人として生きる男をはかなく、しかしたまらないほどキザに演じている。はかなくてキザといえば、裕次郎がウィスキーグラスを片手に、くわえ煙草で、中原中也の詩「骨」にメロディをつけた曲をピアノで弾き語る場面があって、すごく印象的である。聴きながらアレ?と思って、わが書棚の中原中也詩集(文庫ですが)を開くと、やっぱりあの「骨」ではないか!中也の言葉を借りて、漂泊者としての人生観を語る象徴的な場面である。
タイには、自分捜しのために滞在する日本の若者も多いと聞く。「七夜待」や「サヨナライツカ」のように、人生を整理したり、自分の信念的な生き方のために身を置いたりする場所として、タイという地を舞台に選んだ映画もあるが、それらと比べても、本作は不思議にかつ立派に異国の土地になじんでいる。本質的には無国籍ドラマだが、水上の小舟、寺院、市場や南国の植物、さらには温度湿度といった風景風土が、ドラマを味付ける香辛料的な役割を果たしている。
拳銃片手に孤独に生きるしか術のない裕次郎に絡む存在として、彼に尽くす中華系の現地女性を女優岩崎加根子が演じているが、それにしても、粗探しをしたくなるような類のものではなく、むしろ好演である。
ラストシーンは、裕次郎のサングラスに映り込んだ、朝日の光線のクローズアップ。ヒーロー・石原裕次郎主演のアクション映画はやっぱり最後の最後まで、クサいほどに一本筋が通っている。

アジアを、中東も、台湾も、東南アジアも、日活の看板スター裕次郎は、舞台として立派に自分のものにしていることが改めて再確認できた。
(2012年8月25日)

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2011年のわたくしのベスト映画 [そのほか]

[日本映画]
まほろ駅前多田便利軒(大森立嗣監督)
軽蔑(廣木隆一監督)
マイ・バック・ページ(山下敦弘監督)
へヴンズ ストーリー(瀬々敬久監督)
コクリコ坂から(宮崎吾朗監督)
あぜ道のダンディ(石井裕也監督)
一枚のハガキ(新藤兼人監督)
ツレがうつになりまして(佐々部清監督)
(次点)
冷たい熱帯魚(園子温監督)
嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん(瀬田なつき監督)
恋の罪(園子温監督)

[外国映画]
モンガに散る(ニウ・チェンザー監督/台湾)
ソフィアの夜明け(カメン・カレフ監督/ブルガリア)
ヒア アフター(クリント・イーストウッド監督/アメリカ)
イップ・マン 葉問(ウィルソン・イップ監督/香港)
白いリボン(ミヒャエル・ハネケ監督/ドイツ=オーストリア=フランス=イタリア)
ブルーバレンタイン(デレク・シアンフランス監督/アメリカ)
ソウル・キッチン(ファティ・アキン監督/ドイツ=フランス=イタリア)
ブンミおじさんの森(アピチャッポン・ウィーラセタクン監督/イギリス=タイ=ドイツ=フランス=スペイン)
BIUTIFUL ビューティフル(アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督/スペイン=メキシコ)
悲しみのミルク(クラウディア・リョサ監督/ペルー)
4月の涙(アク・ロウヒミエス監督/フィンランド・ドイツ=ギリシャ)
ツリー・オブ・ライフ(テレンス・マリック監督/アメリカ)
蜂蜜(セミフ・カプランオール監督/トルコ=ドイツ)
(次点)
ビン・ラディンを探せ!(モーガン・スパーロック監督/アメリカ)
悪魔を見た(キム・ジウン監督/韓国)
生き残るための3つの取引(リュ・スンワン監督/韓国)
127時間(ダニー・ボイル監督/アメリカ=イギリス)
素晴らしい一日(イ・ユンギ監督/韓国)
密告・者(ダンテ・ラム監督/香港)

2009年10月のシネテリエ天神閉館に続いて、今年は5月13日にシネリーブル博多駅が閉館した。福岡で単館系の作品を上映するミニシアターが相次いでなくなったことで、ソラリアシネマがその一部を肩代わりしていたが、それさえも11月30日に営業終了してしまった。
春に開館したTジョイ博多や、来年1月にTOHOシネマズ天神として再編される旧天神東宝・旧ソラリアシネマは、それらを補完するものとはいえない。福岡の劇場では上映されない作品、されても一日1回や1週間限定という公開のされ方になると、重要なものであっても見逃してしまうものも多々あり、いい映画と出会えるのも、時の運と考えるしかないのかなあ。

※ 1月1日から12月31日までに劇場で観た封切の新作143本から選びました(映画祭上映は除く)
※ 順は1月からの鑑賞順です

(2011年12月31日)

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フルーツ・チャン監督による「女優霊」のリメイク、「THE JOYUREI~女優霊~」 [そのほか]

お盆にWOWOWで、久しぶりにフルーツ・チャン監督の作品(おそらくいま最新の監督作品)を観た。オムニバスの「美しい夜、残酷な朝」以来だと思う。
新作は「THE JOYUREI~女優霊~(Don't Look Up)」という、中田秀夫監督の出世作「女優霊」のリメイクで、2009年製作のアメリカ・日本の合作となっている。
あ、ちなみにわたくしはWOWOWには開局から加入していて、仙頭武則プロデューサーによるJ・MOVIE・WARSのシリーズは当たり外れあったけど、貪るように観たし、映画文化に貢献した画期的なプロジェクトだったなぁとしみじみ。
で、今回、二本の「女優霊」はセットでオンエアされたが、じつは正月にはシアターN渋谷で二本立て上映されていたので、それがセットでテレビに登場というわけだ。マニアにとっては冬でもいいが、一般向けには、ホラーはやっぱりお盆の時期だろう。しかしまあ、これは観てびっくり! フルーツ・チャンの輝かしい過去を傷つけかねない悲惨な作品であった。Jホラーはコンパクトでシャープなストーリーが魅力だと思うが、二本セットでみせる企画は、本家を際だたせるだけで、リメイク版をこき下ろせとでもいうのかしら。比較上映することを目的に撮られたわけではないのだが、単体としてみても、やっぱり評価はどうしても低い。
フルーツ・チャン監督版の作品の舞台設定は、ハリウッド・リメイクなので当たり前だけれど、香港ではない。なぜかルーマニア・トランシルバニア高原にあるという古い映画スタジオである(ロケは米国内のはず)。そこは吸血鬼ドラキュラ伝説の地でもあるが、この映画の舞台は、中世、悪魔だと見なされて殺された少女が悪霊となったとかいうような伝説が残る土地。そこでの「女優霊」は、血まみれの胎児とかハエの大群とか、心理的よりも視覚的な効果を狙ったグロテスク表現と、一方で心理的な部分では、やたらと理屈にこだわったストーリーへと変貌を遂げている。オカルト的である。
恋人を病気で失い、心を病んでしまった映画監督マーカスに、新作映画の話が舞い込む。その撮影のために訪れたトランシルバニアの撮影スタジオは、1928年に、オルト監督の未完の映画が撮られた場所だった。
そこでの映画製作では、以前撮影された未現像フィルムを使ったかららしい二重の映像だとか、現場での奇妙な撮影トラブル、悲惨な事故などが、本家同様に繰り返されていくのである。最終的には、主人公の映画監督が見ている幻覚ともとれるような構成にはなっているが、風土が変わってしまうと、普通か怪奇かの二極だけが問題となり、そこにはもう情感がなくなってしまっている。アジアの監督であっても、ハリウッドの趣味志向が最重要であって、アジアであることに、本家の国の人間としては期待してはいけないということかしら。
フルーツ・チャン監督といえば、やっぱり香港返還を描いた初期の三部作。香港で偶然にプレミア上映で観た「メイド・イン・ホンコン(香港製造)」、福岡でのぴあフィルムフェスティバルで上映され、監督じしんも来福した「花火降る夏(去年煙花特別多)」(確か「ロンゲスト・サマー」という仮題だった)、NHKが出資した「リトル・チュン(細路祥)」のころが懐かしい。香港返還前後の90年代後半は、香港の街そのものが注視されていたし、そのなかで、人々の香港での暮らしに眼を配ったフルーツ・チャン監督作品の国際舞台への登場は、ある意味、劇的だった。
「トイレ、どこですか?(人民公廁)」(02)になると、日本では、韓流スターのチャン・ヒョク、チョ・インソンが出ていることで辛うじてDVDリリースされたぐらいで寂しい限り。「美しい夜、残酷な朝」(04)も、日本においては、興行的にはイ・ビョンホン主演の韓国編に引っ張られていた感がある。
「トイレ、どこですか?」は、世界各地が、トイレの糞溜めの部分で繋がっているという世界観をもとにした、国際的視点(?)の異色ロードムービーだったが、怖いシーンがあった。何が怖かったかというと、上から下に振られて、カメラの撮る絵がトイレの糞溜めへと移っていくところ。「THE JOYUREI」で悪霊を映し出すのとは比べものにならないくらい、一体何が映るのか、怖くて怖くてハラハラした。フン。
(2011年8月29日)

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2010年のわたくしのベスト映画 [そのほか]

[日本映画
花と兵隊(松林要樹監督)
おとうと(山田洋次監督)
春との旅(小林政広監督)
トロッコ(川口浩史監督)
アウトレイジ(北野武監督)
川の底からこんにちは(石井裕也監督)
キャタピラー(若松孝二監督)
酔いがさめたら、うちに帰ろう。(東陽一監督)
ノルウェイの森(トラン・アン・ユン監督)
海炭市叙景(熊切和嘉監督)
(次点)
シーサイドモーテル(守屋健太郎監督)
ちょんまげぷりん(中村義洋監督)
京都太秦物語(山田洋次監督・阿部勉監督)

外国映画]
フローズン・リバー(コートニー・ハント監督/アメリカ
息もできない(ヤン・イクチュン監督/韓国
オーケストラ!(ラデュ・ミヘイレアニュ監督/フランス
プレシャス(リー・ダニエルズ監督/アメリカ)
闇の列車、光の旅(キャリー・ジョージ・フクナガ監督/アメリカ=メキシコ)
瞳の奥の秘密(ファン・ホセ・カンパネラ監督/スペイン=アルゼンチン)
彼女が消えた浜辺(アスガー・ファルハディ監督/イラン)
ペルシャ猫を誰も知らない(バフマン・ゴバディ監督/イラン)
ブロンド少女は過激に美しく(マノエル・デ・オリヴェイラ監督/ポルトガル=フランス=スペイン)
冬の小鳥(ウニー・ルコント監督/韓国=フランス)
(次点)
マチェーテ(ロバート・ロドリゲス監督/アメリカ)
スプリング・フィーバー(ロウ・イエ監督/中国=フランス)

※ 1月1日から12月31日までに劇場で観た封切の新作137本から選びました(映画祭上映は除く)
※ 順は1月からの鑑賞順です

(2010年12月31日)
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2009年に観た劇場公開作136本から選んだ、わたくしのベスト映画 [そのほか]

今年(1月1日から12月31日まで)、映画館に足を運んで観た映画は合計で136本。昨年よりも15本ぐらい少ない本数でした。(旧作や映画祭上映などは除いて封切りに限定)
その内訳は、日本映画40本、外国映画(欧米)25本、外国映画(欧米以外)71本。今年も、そのなかからの2009年ベストをまとめます。順番はランキングではなく、1月からの鑑賞順です。(先週末から滞在している韓国から更新ました)

ファニーゲーム U.S.A.(ミヒャエル・ハネケ監督/アメリカイギリスフランス=オーストリア=ドイツ)
BOY A( ジョン・クローリー監督/イギリス)
そして、私たちは愛に帰る(ファティ・アキン監督/ドイツ=トルコ)
マンマ・ミーア!( フィリダ・ロイド監督/イギリス=アメリカ)
エグザイル/絆( ジョニー・トー監督/香港)
天使の眼、野獣の街( ヤウ・ナイホイ監督/香港)
愛のむきだし( 園子温監督/日本)
フィッシュストーリー( 中村義洋監督/日本)
シリアの花嫁( エラン・リクリス監督/イスラエル=フランス=ドイツ)
チェイサー( ナ・ホンジン監督/韓国)
グラン・トリノ( クリント・イーストウッド監督/アメリカ)
レスラー( ダーレン・アロノフスキー監督/アメリカ)
おと・な・り( 熊澤尚人監督/日本)
チェチェンへ アレクサンドラの旅( アレクサンドル・ソクーロフ監督/ロシア=フランス)
ディア・ドクター( 西川美和監督/日本)
ウェディング・ベルを鳴らせ!( エミール・クストリッツァ監督/セルビア=フランス)
精神( 想田和弘監督/日本)
セントアンナの奇跡( スパイク・リー監督/アメリカ=イタリア)
サマーウォーズ( 細田守監督/日本)
子供の情景( ハナ・マフマルバフ監督/イラン)
ちゃんと伝える( 園子温監督/日本)
アバンチュールはパリで( ホン・サンス監督/韓国)
曲がれ!スプーン( 本広克行監督/日本)
アンナと過ごした4日間( イエジー・スコリモフスキ監督/フランス=ポーランド)

※東京では2008年に公開されたものが、福岡では2009年に公開されているものもあります。

(2009年12月31日)

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2008年に観た劇場公開作151本から選んだ、わたくしのベスト映画 [そのほか]

今年、映画館に足を運んで観た映画は合計で151本。1月4日から始まって、昨日12月29日に観た「K-20 怪人二十面相・伝」が年内ではたぶん最後。昨年よりも20本ぐらい多かったことになります。それにしても「K-20」は、劇作家・北村想氏の小説をベースにしているということが、一般にセールスポイントになるのかどうかはわからないけれども、映画の出来はエンターテインメントとして悪くないし、筆者としては北村想というだけでちょっと感動。「碧い彗星の一夜」「虎★ハリマオ」「十一人の少年」などにハマっていた時代、ハレー彗星の接近をカウントダウンしていた1980年代前半を思い出すなあ。映画には神戸浩も出演していて嬉しい。わが母校でロケされていることも、プラスアルファ。OBの人は、ちょっとみただけで気づくと思う。
で、151本のだいたいの内訳は、日本映画44本、外国映画(欧米)18本、外国映画(欧米以外)89本。今年も、劇場公開作として公開時 に劇場で観た範囲(映画祭上映、海外での鑑賞は除く)での、2008年ベストをまとめます。順番は、ランキングではなく、1月からの鑑賞順です。

ラスト、コーション(アン・リー監督/中国アメリカ
迷子の警察音楽隊(エラン・コリリン監督/イスラエル=フランス
ダージリン急行(ウェス・アンダーソン監督/アメリカ)
4ヶ月、3週と2日(クリスティアン・ムンジウ監督/ルーマニア)
接吻(万田邦敏監督/日本)
アフタースクール(内田けんじ監督/日本)
ぐるりのこと。(橋口亮輔監督/日本)
告発のとき(ポール・ハギス監督/アメリカ)
マンデラの名もなき看守(ビレ・アウグスト監督/フランス=ドイツ=ベルギー=南アフリカ)
シークレットサンシャイン(イ・チャンドン監督/韓国)
アクロス・ザ・ユニバース(ジュリー・テイモア監督/アメリカ)
世界で一番美しい夜(天願大介監督/日本)
1978年、冬。(リー・チーシアン監督/中国=日本)
おくりびと(滝田洋二郎監督/日本)
トウキョウソナタ(黒沢清監督/日本)
三本木農業高校、馬術部(佐々部清監督/日本)
リダクテッド 真実の価値(ブライアン・デ・パルマ監督/アメリカ=カナダ )
レッドクリフ Part Ⅰ(ジョン・ウー監督/中国=日本=台湾=韓国)
その土曜日、7時58分(シドニー・ルメット監督/アメリカ)
青い鳥(中西健二監督/日本)

※東京の2008年公開作品のなかには、福岡での公開が2009年になるもの、公開されないものも多々あります。

(2008年12月30日)

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「長井健司の最前線映像と日本の問題」と題されたイベントについて [そのほか]

7月15日の夜、「長井健司の最前線映像と日本の問題」と題された、映像上映も交えたトークが行われた。トークは、宗教学者の島田裕巳氏と、日本テレビのディレクターの木下氏によるもの。長井さんの友人であった木下氏が、ミャンマー軍による長井さん殺害に抗議する会の代表として、全国を回っているもので、福岡で何か所目かだそうだが、会場である大博多ホールの場所代にあてるために、参加費は500円となっている。
長井健司さんは、2007年9月27日にミャンマーのヤンゴン市内で僧侶らの民主化デモを取材中に、軍の治安部隊に銃撃を受けて命を落とした映像ジャーナリストだが、亡くなってニュースになるまで、筆者は長井さんのことを存じなかった。大半の方もそうだったと思う。のちに2008年の第92回ピュリツァー賞をジャーナリズム・速報写真部門で受賞する、ロイター通信のアドリース・ラティーフ氏による報道写真の被写体 - 撃たれた長井さんが路上に横たわりながらも、なおもカメラを離さない、その姿 - になったことで、長井さんは国際的に衝撃を与えたわけである(全国紙にも掲載されたほか、このホームページでも取り上げた映画「パレスチナ1948・NAKBA」の監督・広河隆一氏が編集長を務める「デイズ・ジャパン」の表紙にもなった)。
この夜のトークと上映、というか木下氏たちの全国各地を渡り歩く旅は、長井さんの残した映像の上映と彼に関するエピソードなどによって、ミャンマーのことというよりもむしろ、ジャーナリズムの世界に生きた長井さんのことを、多くの人々に知ってもらうための、巡礼のようなものだと思う。もちろん筆者を含め観客は、長井さんが亡くなるまで手離さなかったカメラとテープの返還をミャンマー政府に求めるための署名を会場で書いてきたが、この夜に観たこと聞いたことは、共鳴したいち観客として、ここに記しておきたいと思う。
フリーのジャーナリストは、放送局から請け負って取材をしてきたり、または取材してきたものを局に売るかだそうだ。だから局に所属しているディレクターだと、社から渡航を止められるようなところ、すなわち極めて危険な地域にも、足を踏み入れることになる。「誰も行かなければ、誰かが行かなければならない」が長井さんの座右の銘だったことが紹介される。
長井さんは、ミャンマーで僧侶によるデモとその鎮圧が激化してきたころにちょうどバンコクにいて、他のジャーナリストよりもいち早くにヤンゴン入りを果たし、その最前線に到達することになった。
会場で上映された映像は、まず三つのものをワンパッケージにした20分。ひとつ目は、長井さんが泊まっていたヤンゴンのホテルに残っていたテープで、亡くなる2007年9月27日の前日までの取材活動が記録されていたものだ…。バンコクからヤンゴンへと渡る機内の様子から始まるが、この取材によって翌日に長井さんが命を落とすことになろうことまでは予想もつかない。
二つ目は長井さんが2003年にイラクを取材したもの。「Iraq War 2003: Children’s Cry」と題されている。映像は、市民によってフセイン像が倒される場面から始まる。この歴史的なシーン自体はとても有名で、長井さんだけが立ち会えたスクープというわけではないが、それから映像は、戦禍の街の様子、とりわけ犠牲となった子どもたちに迫っていく。焼けただれてしまって肌の色もよくわからない映像はショッキングである。
三つ目の2006年のパレスチナの映像も、とても衝撃的である。長井さんは以前からパレスチナの取材を重ねていたそうだが、この映像もガザ市内の混乱の様子をよく捉えている。たまたま居合わせたのかどうかはわからないが、多くが集まる海水浴場で突如イスラエルからの砲撃が始まり、平和な光景は一転して悲惨な血の舞台となる。長井さん自身がフレームの中で務めるレポートで、頭部が吹っ飛んでしまった子どもの様子が伝えられる(映像はボカシ)。浜辺には血まみれのビーチシートが生々しく残され、海の向こうに不気味な船が浮かんでいる…。音楽が好きで自作曲のCDも製作するほどだったそうで、このパレスチナの取材レポートには、長井さんによる曲(題名「もう、会えない」)が付けられていた。
これらの映像から、長井さんがひとりのジャーナリストとして、どのようなテーマに対峙していたのかということがみえてきた。
そしてもうひとつ、「原爆の火」という20分ぐらいのドキュメンタリーも上映された。TBSの「NEWS 23」のなかで放送されたそうだが、放送されたものはこの作品のエッセンスみたいなもので、長井さん自身が編集のほかナレーションも務め、ディレクターズ・カット版として制作していたのが、本作だそうである。この夜トークを務められた木下氏によると、戦場ジャーナリストは通常、取材した素材を局に送り出すことが精一杯なので、この「原爆の火」の完全版は、長井さんの制作者としてのスタンスがみえてくる貴重な作品だそうだ。観てみてわかる、確かに作家性を持った、長井さんがメッセージを込めた作品である。
1945年8月6日、広島に投下された原子爆弾の残り火を焼け野原で見つけ、たまたま持ち合わせていた携帯のカイロに移して故郷の福岡・星野村に持ち帰った当時青年だった山本さんについての取材である。その火はいまも星野村の公園で“平和の火”として燃え続けているそうだが、山本さんというこの老人は、この取材後に故人となっている。しかしこの作品の中では、長井さんがレポーターとしてこの老人に、平和についての独白を語らせている。米国に対する恨みについて「恨みを消す努力をしてきた」という言葉を老人から引き出し、イスラム世界における今日の対立に話を運ぶ。世界の恒久平和を願うこの老人の存在が、この作品をとおして制作者・長井さんの人柄をも浮き立たせることとなったのである。
戦場ジャーナリストは、野次馬根性とスクープに対する名声のために活動しているのだというのは勝手な解釈であって、ひとの命の大切さを訴えるために世界を飛び回っている長井さんのようなジャーナリストが、危険を冒すことにはなっても命を粗末にしているはずもなく、長井さんの事件は本当に不幸なできごとであった。
宗教学者の島田氏が、東京青山で執り行われた長井さんの葬儀のことを話していた。日本国内にこんなにたくさん住んでいるのかという位のミャンマー人が参列されたそうだ。島田氏が宗教学的視点から、ミャンマー人の感じる長井さんの死と、日本人が感じる長井さんの死の間にあるへだたりを解説されていたが、ここでは省略する。
ミャンマーの人々のために、ジャーナリストでもない一般のわれわれができることは何なのだろう。
(2008年7月22日)

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韓流歴史ドラマ「朱蒙」の声優交替から、連鎖して思ったこといろいろ [そのほか]


中英日3か国語併記になっている、韓国MBC局のドラマ「朱蒙」の海外販売用パンフレット

BSフジでオンエアされている韓流の歴史大河ドラマ「朱蒙(チュモン)」(毎週水曜午後8時)を、昨年春の初回放送からしっかり観ている。古代、高句麗を建国したという伝説の英雄・朱蒙の生涯を描いたオリジナルで60話のシリーズで、韓国では2006年の最高視聴率をマークしたそうだが、筆者としては、中韓の間の論点となっている古代国家・高句麗の歴史認識問題のこともあり、ドラマ「朱蒙」を巡る中国側の非難が当初より叫ばれていたことから、それを興味のきっかけとして見始めたわけだ。ドラマに出てくる漢の軍隊はとても残忍に描いているし、何より高句麗は古代中国の地方政権だというのが中国側の主張なのだから。なるほど、韓流ブームとはいえ、これじゃあ「朱蒙」は反中国的作品として絶対に受け入れられないだろう(ちなみに香港の亜洲電視では“漢朝”を“天朝”と曖昧に加工処理して放送したそうだ)などと思って見始めたわけだが、意外にも面白いドラマ展開に、今やすっかりとはまっている。
で、筆者もすぐに気づいたのだが、年が明けて1月9日の放送分・第36話から、何と主人公チュモンの吹替えの声優が、突然に変更された。それまでの若々しくて伸びのある声から、それに比べ低く落ち着いた声となり、放送直後からBSフジに対して戸惑った視聴者から650件を超える問い合わせが殺到していると翌日には報道された。
放送局側の回答は「主人公がこれから壮年期を迎えるにあたり、より成熟した大人のイメージを出すためにバトンタッチした。以前から決まっていた」ということだ。演じる俳優のソン・イルグクはそのままなので、本当に声だけがガラリと変わったことになる。つまりは、視聴者(観客)は、これまで二次的に演出された作品を観続けていたことで急に違和感を覚えたわけだ。
外国語映画などの翻訳されたものを観る場合、この二次的な加工の問題が必ず付きまとう。吹き替えの場合はまずイメージが左右されるし、字幕版でも小さなところではキャラクター設定、大きなところでは物語の本筋を巧妙に変えていくなど、いろいろなことを、やろうと思えばやれる。
■           ■
福岡アジア美術館では、開催中の特別展「韓国美術のリアリズム1945-2005」に合わせて、正月の2日から「韓国シネマウイーク」と題した、ニューウェイブ前後の作品の上映会が行われ、未見だったペ・チャンホ監督の企業ドラマ「鉄人たち」(82)をそこで観ることができた。ペ・チャンホのその後の作品に比べると凡庸だったが、財閥・現代グループの宣伝映画という点では映画史としてみると貴重かも。素材提供は韓国文化院。この韓国文化院は自国の文化紹介のため、韓国の映画に日本語字幕を付けて上映会を開催したり、素材を貸し出したりしている。
ということで、この「鉄人たち」の日本語字幕も、古くに韓国サイドで付けられたもの。誤字はよくあることだが、今回はシリアスな場面の台詞に男言葉と女言葉が入り混じっているところ、シーンにふさわしくない言葉遣いなどが見受けられた。こうなると、イメージ云々以前に苦笑してしまう。
以前アジアフォーカスで上映された韓国映画「ミスター主婦クイズ王」(05)。このコメディードラマの中ではハン・ソッキュ演じる主人公の故郷の言葉として、字幕では博多弁が採用された。都会の言葉と差をつけるためだが(実際、劇中でしゃべられている韓国語は方言なのだという)、この程度は、映画祭上映の範疇のサービス精神として許されるものと思う。
■           ■
さて、そもそも外国映画を観るのに字幕もしくは吹き替えが必要だろうか。
筆者は以前、日本語学校で学ぶ中国人留学生20人ぐらいを対象にして、頼まれて講演をしたことがある。“映画と文化”みたいなテーマだったと思うが、そのなかで30分弱のイランの短編映画をビデオで留学生たちに見せた。新人のAli Vazirian監督からいただいたもので、タイトルは「Once Rain」。母親の買ってくれた大切な雨傘を失くしてしまった貧しい少年を温かく描いた児童映画で、よくできた短編だ(このホームページで前に紹介)。ただし、セリフはペルシャ語。ところどころ場面の解説はこちらがしゃべったが、中国人留学生たちは、言葉のわからないイラン映画を、30分間懸命に喰らいついて鑑賞してくれた。そして観たあとの感想としては、いい映画だ、素晴らしい、面白かったと良好なものばかりで、字幕や吹き替えがなくとも外国語映画の感動がそのまま伝わるという結果となった。
筆者も、アジア映画を原語のみで見ることがしょっちゅうある。自分の語学力としてはタイ語、中国語、タミル語などなど本当にどれもこれもすべてお手上げなのだが、素晴らしい映画は本当に、映画の方から、国境を越えて、こちらの胸の中まで飛び込んでくる。心に届くのだ。推理もの、犯罪もの、歴史ものなど込み入った人間関係などの詳細な情報を必要とするストーリーはさすがに難しいが、人間そのものを描いたドラマには、それほど言葉はいらない。児童映画になると、感覚だけで観ることもできる。
■           ■
よく、特に、行政の間では、小中学生の国際理解のためにアジア映画を観せてはどうかという声が上がるようだ。そしてその際に必ず出てくるのが、吹き替えじゃないと駄目だとか、字幕が必要とか、難しい漢字は読めないといった、心配性の親ごころに因る障壁だろうと思う。けれども、前にこのホームページでレポートしたNHKの「アジア子どもドラマシリーズ」は、アジア各地の子ども向けドラマを、要所要所にだけ、字幕やナレーション、吹き替えを使い、全体的に映像を“言葉”として扱っていてとても好感が持てた。子どもたちの感受性があれば、優れた映画は充分心に届くと信じることができる。
わが愚息だって、外国のホテルに泊まると、現地で放送されている子供向けアニメを、言葉もわからないくせにテレビにかじりついて観る。それに、福岡の名物になっている「アジア太平洋こども会議」というイベント。アジアの子どもたちが福岡の子どもの家庭にホームステイしたりする行事だが、これも当たり前のことであるが、子どもと子どもの間にひとりずつ通訳を付けるわけでもないが、何とかコミュニケーションをとって子ども同士に友情が生まれている。
■           ■
昨年末にタイ映画ライターのM.Sさんに用意していただいた新作タイ映画のDVDが何枚かある。字幕も何もないが、頑張って観て、レポートできればと思っている。
(2008年1月19日)



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2007年に映画館で観た封切作127本から選んだ、わたくしのベストテン [そのほか]

今年1月1日から12月末日までで、普通に映画館に足を運んで127本の映画を観ました(本日観た「魍魎の匣」がたぶん年内最後)。3日に1本といったペースでしょうか。大雑把な内訳は、日本映画45本、外国映画(欧米)22本、外国映画(欧米以外)60本。ということで、筆者が劇場公開作として公開時に劇場で観た範囲での、2007年ベストテンを記しておきます。並びはランキングではなく、1月から観た古い順です。数えると15本ありますが…

それでもボクはやってない(周防正行監督/日本)
グアンタナモ、僕達が見た真実(マイケル・ウィンターボトム&マットホワイトクロス監督/イギリス
絶対の愛(キム・ギドク監督/韓国
映画館の恋(ホン・サンス監督/韓国)
黄色い涙(犬童一心監督/日本)
ツォツィ(ギャヴィン・フッド監督/南アフリカ=イギリス)
コマンダンテ(オリバーストーン監督/アメリカ=スペイン)
明日、君がいない(ムラーリ・K・タルリ監督/オーストラリア)
サイドカーに犬(根岸吉太郎監督/日本)
約束の旅路(ラデュ・ミヘイレアニュ監督/フランス)
ボルベール~帰郷(ペドロ・アルモドバル監督/スペイン)
夕凪の街 桜の国(佐々部 清監督/日本)
天然コケッコー(山下敦弘監督/日本)
めがね(荻上直子監督/日本)
この道は母へとつづく(アンドレイ・クラフチューク監督/ロシア)
浜辺の女(ホン・サンス監督/韓国)

(2007年12月30日)


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